1.1 日本の国土と人口構成
日本は東アジアに位置する島国であり、国土総面積は約377,900平方キロメートルである。本州、北海道、九州、四国と沖縄本島のほか6,800を超える島から構成されており、47の都道府県が地方公共団体として自治権を持つ。
日本の総人口は約1億2,700万人であり、およそ90%が都市部や市街地に居住している。2016年現在、総人口の約36.5%が東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県に集中している。そのうち東京都の人口が最も多く、総人口の約10.7%にあたる[1]。
少子高齢化率
現在、人口の高齢化と低出生率[2][3]が日本の保険医療制度が直面している2つの大きな課題となっている。
2016年10月1日現在、65歳以上の高齢者が全人口の27.3%を占めている。また、この数字は2060年までには38.1%に達する見込みである。
老年人口指数(65歳以上の老年人口と15歳から64歳までの生産年齢人口の比率)は2015年の時点で秋田県が最も高く(60.7)、次に高いのは高知県(59.2)であった。一方、最も低いのは沖縄県の(31.2)であり、2番目に低い割合を示したのは東京都(34.3)であった。
2015年の出生率は全国で1.45である。出生率は東京で最も低く1.24であり、最も高い沖縄では1.96であった。
高齢化は日本国内で均一に進むものではない。東京 及びその近郊、大阪、名古屋といった大都市圏では、特に劇的な高齢化が急速に進行すると考えられている。高橋* によると、2010~2025年にかけて全国で700万人の後期高齢者(75歳以上)が増加、その増加分の50%以上が首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)・大阪圏・ 名古屋圏に集中する。一方で、それら3圏域は国土面積のわずか2%であり、「超高齢化」は大都市でより進むことが分かる。特に東京中心部(23区内)では高齢者向け施設のベッド数は全国平均の半分であり、施設不足が深刻になる恐れがあると高橋は指摘している。
*引用:高橋泰:第9回社会保障制度国民会議資料「医療需要ピークや医療福祉資源レベル の地域差を考慮した医療福祉提供体制の再構築」2013年。
平均寿命と主な死亡要因
日本人の平均寿命は女性が91.35歳、男性が84.95歳と世界トップレベルである[4]。厚生労働省とOECDによる2015年時点の日本の主要死因別死亡率は以下に示す通りである。
また、2014年のWHOの統計によると、日本の総死亡数のうち約79%は非感染性疾患(NCD)によるものであり、そのうち約30%はがんによる死亡である。また、心臓病による死亡が約29%、その他の非感染性疾病による 死亡が約12%である[5]。
障害調整生存年数(DALY)*に焦点を当てると、疾病負荷が特に高いのはがん、心臓病、糖尿病、精神・神経系疾患、筋骨格疾患、呼吸器系疾患、その他の非感染性疾病、外傷、感染症である[8]。今後、人口の変化と高齢化に伴い、生活習慣病や変性疾患による疾病負荷が増大すると考えられている。
2015年の世界銀行の試算によると、日本の5歳未満児死亡率(U5MR)は出生1,000人あたり3人である。また、妊産婦死亡率は出産10万件あたり6人であり、これは1990年と比べて約50%減少している[9]。
*障害調整生存年数(DALY)とは特定の疾病や傷害による健康の損失(疾病負荷)を示す指標である。「死が早まることにより失われる生存年数(YLL)」及び「健康でない状態で過ごす年数(YLD)」の合計により算出される。
2010年から2040年の人口推移を年齢別にみると、日本で高齢者として定義されている65歳以上人口が約900万人増加する一方で、 0-64歳人口は3,000万人も大幅に減少するとみられている。そして2040年 前後から、高齢者の絶対数の伸びはフラットになる。つまり 高齢者は増加しないが、現役世代の大きな減少により総人口は15%程度減少、高齢化「率」が上がることとなる。
- [1] 総務省統計局「人口推計」http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/index.htm#a05k28-b(アクセス日2017年9月15日)
- [2] 内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版)」http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html(アクセス日2017年7月24日)
- [3] 厚生労働省政策統括官「平成29年我が国の人口動態」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf(アクセス日2017年7月24日)
- [4] 内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版)」http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/zenbun/29pdf_index.html(アクセス日2017年7月24日)
- [5] World Health Organization (2014). “Noncommunicable diseases country profiles 2014” http://www.who.int/nmh/countries/jpn_en.pdf?ua=1(アクセス日2017年7月24日)
- [6] 厚生労働省「平成29年 我が国の人口動態」http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf(アクセス日2018年2月2日)
- [7] OECD “Health at a Glance 2013: OECD Indicators” Paris: OECD Publishing, 2013.
- [8] World Health Organization (2015). “Japan: WHO statistical profile.” http://who.int/gho/countries/jpn.pdf?ua=1(アクセス日2017年7月24日)
- [9] The World Bank (2015). “Mortality rate, under-5 (per 1,000 live births)” http://data.worldbank.org/indicator/SH.DYN.MORT(アクセス日2017年7月24日)
1.2 公的医療保険の歴史
現在の日本の医療制度を理解するには、その成り立ちから理解することが不可欠である。日本の公的医療保険制度は、職域保険(被用者保険)、地域保険(国民健康保険)、後期高齢者医療制度という異なる3つの構造から成り立つ。 この 3 つの公的医療保険が、現在、ほぼ全ての日本国民と日本国内の長期滞在者(合わせて 1 億 2,700 万人以 上)をカバーする世界最大級の医療保険制度の礎となっている。このように複数の制度、複数の医療保険者により運営されている背景には、1922年の健康保険法成立以降、様々な制度改正が行われてきた歴史的経緯がある。
公的医療保険の歴史
公的医療保険制度のはじまり
18世紀後半から19世紀にかけてイギリスで起こった産業革命の波は、やがて日本にも到達した。19世紀後半には官営工場が民間に払い下げられたのを契機に、日本の産業革命が本格化した。日本も世界と同じく、炭鉱、工場といった環境で働く労働者が急増し、労働環境の改善・権利擁護を求める労働運動・社会運動への対策は喫緊の課題となった。こうした状況を受け、1916年には、職工の就業制限や業務上の傷病や死亡への工場主の扶助を義務付ける工場法が制定された。